派遣の抵触日とは?気をつけることは?ルールを徹底解説!

スキルアップ
2020.11.29
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2015年の労働者派遣法の改正にともない耳にする機会が多くなった「抵触日」。派遣会社だけではなく、派遣を使うアパレル企業にとっても気をつけなくてはいけない重要な制度です。

そこで今回は、抵触日のルールや派遣先企業に求められる対応についてお伝えします。

抵触日ってなに?

── 派遣期間の制限
2015年9月30日の労働者派遣法改正では、すべての業務において派遣スタッフの利用は『最長3年間』という派遣期間の制限が設けられました。これにより、原則として3年を超えて派遣スタッフを利用することはできなくなってしまいました。

この3年を超えた日(丸3年間+1日目)が『法律に抵触する日』ということで抵触日と呼ばれます。たとえば、2020年4月1日から派遣スタッフの利用を開始した場合、2023年の4月1日が抵触日となります。

── 抵触日はなぜ設けられている?
前回、人材派遣ってどういう仕組み?企業にとっての利用メリットや活用方法を徹底解説!
https://www.staff-b.com/topics/detail/555/

でも少し取り上げましたが、政府の人材派遣に関する基本方針は『あくまでも一時的な人材不足を補う仕組みであって、長期継続するべきものではない』というものです。抵触日は企業と労働者の両方の視点でこの基本方針に基づいて設定されています。

では、両方の視点とはどういうことなのか?少し掘り下げてみます。

まず、企業の視点から見てみましょう。派遣スタッフを3年を超えて利用しなければ業務が回らない事業所や部署は慢性的な人手不足だと捉えることができます。そのような場合は『正社員を雇ってください』というのが政府の考えです。

次に、労働者の視点から見てみましょう。3年を超えて同じ職種で働いている労働者であれば、正社員同様のスキルが備わっていると捉えることができます。そのような労働者に引き続き働いてもらいたいのであれば『キャリアアップをはかり正社員として雇用をしなさい』という政府の方針になるのです。

このように、企業視点と労働者視点で抵触日が設けられた目的が少し異なっています。そのため、企業視点での抵触日を事業所単位の抵触日といい、労働者視点での抵触日を個人単位の抵触日といいます。

つまり、抵触日は2種類存在することになるのです。なお、下記のいずれかに該当する派遣スタッフは例外として抵触日の制限を受けません。

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・派遣元で無期雇用されている派遣スタッフ
・60歳以上の派遣スタッフ
・終期が明確な有期プロジェクトに就く派遣スタッフ
・1カ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下の派遣スタッフ
・産休や育休、介護休暇などを取得する人の代替要員となる派遣スタッフ
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■ アパレル業界の人材派遣に関するお問合せはスタッフブリッジまで
https://www.staff-b.com/contact/

事業所単位の抵触日とは?

それではまず事業所単位の抵触日についてみていきましょう。

── 事業所単位とは?
派遣法では『同一の派遣先(事業所)に労働者を派遣できる期間は3年を限度とする』と定められています。ある事業所で初めて派遣スタッフを受け入れてから3年を超えると抵触日を迎え、以降は派遣スタッフの受け入れはできなくなります。ここでいう事業所とは、基本的に『雇用保険の適用事業所』と同じです。

── 雇用保険の適用事業所とは?
一般的に次の3つの要件を満たす事業所が雇用保険の適用事業所に該当します。

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・場所的に独立していること
・経営単位として一定の程度の独立性(ある程度の人事決済権)があること
・施設としての継続性がある(催事店舗などではない)こと
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簡単にいうと、『ある程度の人事決裁権を持った店舗=雇用保険の適用事業所=派遣法でいうところの事業所単位』となるわけです。あるアパレルブランドの店舗で初めて派遣スタッフを受け入れたときの事業所と事業所単位の抵触日の考え方を例示します。

■企業がその店舗単体で雇用保険の適用事業所を設置していた場合
店舗で初めて派遣スタッフを受け入れてから3年を超えた日が事業所単位の抵触日になります。

■企業がその店舗と近隣店舗をまとめて雇用保険の適用事業所を設置していた場合
近隣店舗を含めて初めて派遣スタッフを受け入れてから3年を超えた日が事業所単位の抵触日になります。

■企業が企業全体で雇用保険の適用事業所を設置していた場合
企業全体で初めて派遣スタッフを受け入れてから3年を超えた日が事業所単位の抵触日になります。

── 3年を超えて派遣社員を受け入れるためには?
それでは1つの事業所では3年を超えて派遣社員を利用することはできないのでしょうか?

実は、この3年間の期間制限は企業が従業員に対し『意見聴取』することにより延長が可能です。先述の通り、3年を超えて派遣スタッフを受け入れるような事業所は慢性的な人手不足であり、本来ならば正社員を登用すべきと考えられます。

それに対し、『事業所の従業員が派遣スタッフの受け入れに対して同意をしているのであれば、そこは認めますよ』という逃げ道を作ってくれているのです。

また、これとは別で無期雇用の派遣スタッフであれば事業所単位の抵触日の制限を受けることはありません。

── 意見聴取の方法は?
意見聴取は『事業所単位の抵触日の1ヶ月前まで』に企業の労働組合(ない場合は過半数代表者)に対して『書面』にて行う必要があります。なお、この意見聴取は『事業所単位』ごとにおこなってください。

聴取すべき内容は下記の2点で、これを書面にて締結し3年間保管をしておく必要があります。
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・抵触日を延長したい事業所名
・延長しようとする派遣期間(3年以内)
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■ アパレル業界の人材派遣に関するお問合せはスタッフブリッジまで
https://www.staff-b.com/contact/

個人単位の抵触日とは?

次に個人単位の抵触日についてみていきましょう。

── 個人単位とは?
派遣法では『派遣スタッフが同一の組織で働くことができる期間は3年を限度とする』と定められています。

ある派遣スタッフが特定の部署で就業を開始してから3年を超えると抵触日を迎え、以降はその部署で働くことができなくなります。ここでいう組織とは基本的に「店舗」「課」「グループ」などを指します。また、派遣会社が変わったとしても個人単位の抵触日は引き継がれます。

── 3年を超えて同じ組織で働くことはできない?
原則、別の組織への配置異動などが必要になります。どうしても派遣スタッフを同じ組織で働かせるためには下記の手段をとる必要があります。

■その派遣スタッフを派遣先企業が直接雇用する
派遣先に直接雇用されるわけなので抵触日の制限を受けることはありません。

■その派遣スタッフを派遣元に無期雇用にしてもらう
事業所単位の抵触日と同じで無期雇用の派遣スタッフは抵触日の制限を受けることはありません。

抵触日に関する注意点

── 2つの抵触日の関係性
事業所単位の抵触日と個人単位の抵触日では、事業所単位の抵触日が優先されます。個人単位の抵触日まで期間が残っていたとしても、事業所単位の抵触日を超えて派遣スタッフを受け入れることはできませんので注意が必要です。

── 抵触日の通知、管理義務
抵触日に関しては事業所単位の抵触日、個人単位の抵触日ともにしっかりと管理をしていかなければいけません。

■事業所単位の抵触日
派遣先企業は労働者派遣契約を締結するにあたり、派遣会社に事業所単位の抵触日を通知をする義務があります。
なぜならば、事業所単位の抵触日を把握できるのは派遣先企業だからです。

■個人単位の抵触日
派遣会社は雇用契約を締結するにあたり、派遣スタッフに個人単位の抵触日を通知する義務があります。
なぜならば個人単位の抵触日を把握できるのは派遣会社だからです。

このように抵触日の把握先は派遣先企業、派遣会社それぞれとなりますのでお互いしっかりと管理をしていく必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は抵触日のルールや対応方法についてご紹介しました。人材派遣を利用するにあたり、抵触日を正しく理解・把握をして社内で管理していくことや、派遣会社と密に連絡を取り合いながら対応することが重要なポイントとなってきます。

弊社スタッフブリッジでは、抵触日が一目でわかる管理システムを派遣先企業様にご用意しています。少しでも興味を持たれたら、是非スタッフブリッジへご相談ください。